「担任を替えろ」「あの子を別室にしろ」「2人を接触させないように常時教員をつけろ」保護者から無理難題を要求されて、学校は通常の教育活動ができない事態に見舞われて、教員が精神的に病んでしまうこともあります。学校はどこまで対応する義務があるのでしょうか。きちんと整理してみます。
すべての責任を負っているわけではない
「学校内で起こったこと」でも、学校が全責任を負っているわけではありません。
法律や代表的な判例をトータルすると次のように言えます。
学校の対応の責任範囲は「予見可能性と結果回避可能性の範囲内」であり絶対的なものではない。
分かりやすく言うと次です。
「その事態は予見できた」「その結果は回避できた」という範囲内でのみ対応する義務がある。
「教育上対応すべき内容」は学校裁量
保護者の要望が合理的で実行可能なら、学校は最大限の努力をすべきです。
現実的に無理なことや学校教育全般に大きな支障があることだったら、丁寧に断るべきです。
教育課程運営の権限は校長にあるからです。
断る際には誠意ある説明もします。
「担任には管理職が責任をもって指導いたします」
「管理職も学級での様子を毎日よく観察していきます」
「当面は2人がなるべく接触しないように、学校全体でも見守りをしてまいります」
保護者が納得しなくとも
学校は合理的で実行可能な対策を、保護者と丁寧に話し合います。
保護者が納得する結論に至らないこともあります。
その場合は、丁寧に説明を繰り返して諦めていただくことも肝心です。
できそうもない対策を約束してしまうと、「学校は約束を履行していない」という展開にもつながってしまいます。
念書の提出には応じなくてよい
学校が念書の提出を求められても法的には応じる必要はありません。
理由は以下です。
【法の規定はない】学校の対応義務は、学校教育法や学校保健安全法などに基づくものであり、個別の保護者との約束文書は法的には必要とされていません。
【学校の裁量権】個々の事案に応じて適切な対応を選択する権限が学校にあり、念書の提出が適切でないと判断すれば、それを拒否することができます。
【公平性の確保】 特定の保護者との間で念書を交わすことは、他の児童生徒や保護者との公平性を損なう可能性があります。
【柔軟な対応の必要性】状況は刻々と変化する可能性があり、固定的な約束事を文書化することで、状況に応じた柔軟な対応が困難になる恐れがあります。
しかし、念書にしなくとも、保護者の気持に寄り添い、丁寧な聞き取りや対策の明確化は必要です。
区市町村によっては、情報開示のルールがあるので、開示請求があったら教育委員会とも連携して、適切な手続きを経て情報を開示する必要はあります。
まとめ
「教育上対応すべき内容」は学校裁量であり、無理難題には応える必要はありません。
念書の提出を求められても応じる必要もありません。
また、「○○までに○○せよ」と一方的に期限を設定した要求に対しても、無理な約束をする必要もありません。
次のように伝えます。
「事実関係を改めて整理したうえで、できるだけ早く回答いたします。日時に関してはこちらから連絡いたします」
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