ある学校で6年生を担任しました。
とても仲の良い学級で、明るく快活な女の子Aさんが、よく発言して学級の中心的な存在でした。
ところが、夏頃からAさんは、段々おとなしくなり、全く発言しない子に変わってしまいました。
暫く見守っていましたが、様子は変わりませんでした。
ただ、1点気になる行動がありました。
Aさんは授業中、時折、学級の「No.2的な存在」のBさんをちらちらと見ていたのです。
私は放課後に、そっと話しかけました。
「Aさん、本当は苦しんでしょ。Bさんが怖いんでしょ」
すると、Aさんは泣き出し、心の内を吐露してくれました。
Aさんは、Bさんに時折睨まれて牽制され続けていたのでした。
原因は「好きな人」でした。
さかのぼること5月。
1人の男子が転校してきました。
穏やかな性格で、勉強ができて、足も速くサッカーも抜群に上手い。
彼は、天が二物も三物も与えたようなスーパー小学生でした。
女子全員が彼に恋心を抱いていたのでした。
Bさんにとって、学級で一番目立つ存在だったAさんがうとましく思えてきたのでしょう。
大人気の転校生がAさんに注目することを阻止したかったのでしょう。
とてもデリケートな恋心の問題でしたが、私は、もちろんBさんに指導しました。
「先生には理由が分からないけど、Aさんを睨んだり無視したりすることは止めようね。あなたのやっていることは、いじめかもしれないよ。」
Bさんは、うつむいたまま小さく頷きました。
その後、この2人の女子の様子と関係は、大きく変化したわけではありません。
しかし、Bさんのあからさまな牽制行為はなくなりました。
子どもたちの心の不調には、友達にも大人にも言えないような理由や事情が潜んでいる場合もあります。
そこに迫れることは、極まれなことです。
でも、私たち大人は、子どもたちの気持ちに、きめ細かく寄り添う努力をしていきたいですね。
好きな人
