恥ずかしながら告白します。
私には、今でも克服できない苦手があります。
電話をしながらだと、まともにメモがとれないのです。
電話中にメモをすると、字形が崩れて、書き損じだらけになります。
また、講演会などで聞きながらメモをとると、逆に話の所々を聞き逃すのです。
だから、電話を切ってからメモしていますし、講演会では、最低限の事しかメモしません。
長い間、子どもたちの教育に携わり、今ではこの苦手が自分なりに解明できています。
きっと、発達検査でいうところの短期記憶力(ワーキングメモリー)が劣っているのです。
もしくは、話す、聞く、読む、書くなどの言語活動を、同時進行で行うことが苦手なのです。いわゆる「学習障害」なのかもしれません。
そんな困った私ですが、小学校時代に特異な能力がありました。
それは、見たものを正確に絵で再現できることです。
前の晩にテレビで見た歌謡番組の一場面などを絵で再現できたのです。
歌手の表情、衣装の模様、髪形など細部に至るまで再現できたのです。
学校のきれいなテスト用紙の裏面にお絵描きすることが大好きでした。
表面のテストを終えると、真っさらな裏面に、目に焼き付いた場面を一心不乱に描き込んでいました。
よく野口五郎やフォーリーブスなどを描いていました。
その絵を見て大抵の人は、「えっ」と絶句していました。
きっと、リアルすぎる描写画にドン引いていたのでしょう!?
母からは「絵を描いている暇があったら、もっと見直しなさい」とよく叱られていました。
絵で再現する力は、中学生の頃にはなくなっていました。
2つ以上の言語活動が同時にできないことは、「障害」かも知れません。
しかし、見たものを絵で正確に再現できることは、「才能」かもしれません。
一人の人間の中には、多かれ少なかれ「障害」や「才能」とも言われる発達の凸凹が必ずあるものではないでしょうか。
学校で、毎日多くの子ども達を見ていて、発達の凸凹をよく見受けます。
また、教職員の人材育成に際しても、同じことを感じます。
本来、人は「正常」「異常」で単純には分類できないと思います。
発達の凸凹は、誰にでもある「個性」であり「特性」です。
大事なことは、その「個性」を伸ばしてあげたり、「特性」を適切に支援してあげたりすることです。
ところで、今、来年度に入学する数名の保護者の方々と面談をしています。
いわゆる通常学級と特別支援学級の選択、もしくは特別支援教室のことが話題の中心です。
多くの保護者の皆様が真剣に悩んでいます。
校長として誠意をもって助言しております。
しかし、そのように就学に際し悩むことは、子どもへの愛情の証であり、素晴らしい保護者の姿勢であると思います。
また、現在、在学しているどの学年のどの子どもについても同じだと思います。
学校とご家庭が連携して、子どもの学習や生活の状況から課題を見出したり、その子の発達の特性を見つめ続けたりすることを忘れてはいけません。
発達の凸凹は、誰にでもあるのですから。