子どもの情緒的な不安や問題行動は、学習不振が原因であることが多い。
ときには皆とは違う学習ルールを認めてあげましょう。
漢字が苦手だった子が、苦手を克服して学力を伸ばしていきました。
その実践例を紹介します。
漢字が嫌いで荒れていた男の子
3年生を担任した時に、A君という男の子がいました。
授業中分からなくなったり、上手くいかなかったりすると、見る見るうちに苛立ってきて、プリントをぐちゃぐちゃに丸めたり、友達を突飛ばしたりしてしまうこともありました。
A君は特に漢字テストが苦手で、真面目に練習して臨んでも、60点ぐらいが限界で、100点を取れることはありませんでした。
漢字ノートを見ると、こわばった筆跡で、画が一本足りなかったり、部首が違ったものに入れ替わったりして、間違ったまま練習していることも多かったです。
頑張って練習しても好結果につながらないのです。
特別ルールの適用
A君と話し合いました。
「漢字ができるようになりたいか?」
すると、A君はこっくりとうなずきました。A君に次のように言いました。
漢字練習の宿題は、ノートに2行ずつ書くことになっているが、君は1行でいい。
その代わりに、絶対に間違えないように気を付けなさい。
また、漢字テストの後に間違えた字を2行ずつ練習することになっているが、君は2つだけ正しく書ければいい。
その代わりに、その2つを間違えたら2行書かせるよ。
皆よりも少ない漢字練習でいいよ。
だけど、絶対に、間違って書かないように気をつけるんだよ。
君はそういう練習の仕方をすれば、きっと漢字が得意になっていく。
本人納得のもとで、特別ルールを設定したのでした。
学習の負荷を減らして、練習や直しで1つも間違えないように集中させることを優先したのでした。
もちろん、保護者にもその指導の意図を説明して理解してもらいました。
定着率が急上昇
A君は宿題やテスト後の漢字ノートを、初めのうちは、少し恥ずかしそうに提出してきました。
しかし、A君は漢字練習とテストに意欲的になってきました。
4年生になる頃には、A君は自主的に他の子と同じ量の漢字練習をやるようになりました。
自ら漢字テストで100点を取りに行くようになったのです。
定着率が上がり、5回に1回ぐらい100点を取るようになりました。
A君の学習に対する意欲は、他教科にも波及するようになりました。
計算などもじっくりと丁寧に取り組むようになりました。ノートの字も丁寧になりました。4年生の終わり頃には、A君のイライラが原因のトラブルは全くなくなりました。
漢字での自信が波及効果
A君の母親から個別面談で、5年生以降に学習塾に行かせたいが、どこにしたらよいかと相談されました。
「どの子にも進学塾がよいとは限りません。A君には、授業中に分かるという状態にしてあげることが大切です。予習中心のところを選んだ方がよいと思います」と助言しました。
そして、A君は予習中心の学習塾に入り、学校での学習にも益々意欲的に取り組むようになりました。
さらに、中学卒業後には希望する高校に進学することができました。
まとめ
子どもの困り感や苦手は一人一人違います。
「もっと頑張りなさい」「やる気を出しなさい」では、事態を打開できない場合もあります。
一時期の負担緩和や努力の方向性の重点化で、A君のように、見違えるほど伸びていく子もいます。
本人や保護者と相談のうえで「納得の特別ルール」を作り励ましていくことも、学校でできる合理的配慮です。
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